1020水害レポ

 2010/10/20に奄美大島全域が集中豪雨により各地に大きな被害が出ました。
 10/21現在でもまだ道路が崩落や流出した土砂による通行止めで集落が孤立、停電が続き、固定電話だけでなく携帯電話も通じないところがまだたくさんあります。
 奄美市名瀬でも土砂崩れなどがありましたが、私の家や会社周辺は現在では障害はありません。しかし、10/20の朝、たまたまマングローブにいたため、孤立した住用町西仲間のマングローブパークで一夜を過ごすこととなり、今朝、無事に市内に戻ってきました。

 長文になりますが、昨日から今日にかけてのレポートです。
 なお、時間が無くかきなぐりに近いので、後ほど修正・追加なども有り得ますことをご了承下さい。

10/20 朝
 取材の方(1名)をご案内するため早朝4:30に市内を出発、瀬戸内町漁協へ行き、その後、瀬戸内町周辺を取材後、もう一人の協力者と10:00の待ち合わせでマングローブ茶屋へ向います。
 早朝から小雨模様で瀬戸内町からマングローブ周辺に近づくにつれ少し雨が強くなってきます。
 本来はカヌーに乗って、マングローブの様子などを3名で廻る予定でしたが、雨が強いために断念。そのまま、マングローブ茶屋さんの店舗内で打ち合わせとなります。
 この間、どんどん雨が強くなりバケツをひっくり返したような雨になっていきます。
 打ち合わせ中、郵便配達のバイクの方が雨宿りに立ち寄り、どうやらマングローブパークから住用支所の先が道路が冠水のために通行止めになったという話しをしています。

10/20 昼
 12:00前になっても雨も止みそうも無く、宇検での打ち合わせ予定もあったので、では宇検へ行って、大和村廻りで帰りましょうかと出発。
 ところが、マングローブ茶屋へ行く時には無かったのですが、越次橋(国道58号線から山間集落への橋)へ下る坂道の右手山側の斜面から濁った水と小石・砂が道路に流れだしています。
 なんとなく不安だなと下ると、越次橋周辺は少し冠水しています。
 さらに進むと住用中学校前の道路は完全に冠水。進むのをためらっていると、目の前で停車していた作業者のドライバが腕でバッテンをしています。
 後ろにも車が続いていましたが、危険と判断してバックで下がり、マングローブ茶屋へ戻りました。
 マングローブ茶屋へ戻ってTwitterをチェックしているとTwitterのTL(タイムライン)に@yu_can_fukasalから”車が流れてます。どうしようもない ”と一緒に衝撃の写真が流れてきました。
 最初はどこだかわからなかったのですが、続報を見ると住用支所の2階から国道を挟んだ支所の駐車場が1階平屋の屋根近くまで水があがり、駐車中の車が流されていたのです。
 この間、雨は激しく降り続き、マングローブ茶屋の駐車場は避難してきた車が集まってきます。

 やがて雨が少し収まってきたので、道路の様子を見に行きました。
 まずは越次橋へ下る坂道。そこから見るマングローブの全景は一度も見たことのない景色です。(10/21 13:54)

送信者 20101020住用水害

 ほぼ同じアングルの穏やかな日の景色はこちらです。

送信者 100327マングローブ

 同じ場所から道路と山側を見ると、山の斜面からは濁った水が増え、前方では歩道を残して既に崩落しています。(10/20 13:55)

送信者 20101020住用水害

 反対側のマングローブパーク側へと行くと道路は川のようになり側溝から水が噴水のように吹き出してます。(13:59)

送信者 20101020住用水害

 その先は流れだした砂利が道路を河原へと変えつつあり、斜面の一部も崩落していました。(13:59)

送信者 20101020住用水害

 崩落しているところです。
 この時はちょっとの崩落と思ったのですが、後でとんでもないことがわかります。(13:59)

送信者 20101020住用水害

 後でマングローブパーク側に降り、この崩落現場の下から見上げたところです。(14:48)

送信者 20101020住用水害

 芝生の上に土砂が散乱しています。
 これは後から考えて気づいたのですが、つまり、山から大量の土砂がものすごい勢いで噴出し、一部を道路にばらまいて、ここまで飛んできたのでしょう。道路に落ちた土砂は道路上を流れる水に一気に下へ流されたのかもしれません。
 山の上の方に亀裂があったのでしょう。ここはその後16:30頃に大きく崩落して道をふさぎます。

 さらに坂を下っていくと側溝から吹き出した水が側溝のコンクリートの蓋を吹き飛ばして吹き上げてます。(14:00)

送信者 20101020住用水害

 この場所からマングローブパークを見下ろすと駐車場まで冠水しています。(14:00)

送信者 20101020住用水害

 マングローブパークの入り口(写真右の電柱の先を右)へ山から大量の水と土砂が流れこんでいます。(14:01)

送信者 20101020住用水害

 入り口の歩道がかろうじてマングローブパークへと続いていて歩けるようになってます。
 その曲がり角から住用支所方向を見ると完全に冠水しています。右手電柱の下には50cmほどの手すりがあるはずですが、完全に見えません。(14:05)

送信者 20101020住用水害

 マングローブパークの様子を見た後に一旦マングローブ茶屋へ戻りますが、茶屋では食事ができません。茶屋には10:00に待ち合わせをした協力者の方(Kさん)も戻っていて、マングローブパークのレストランで昼食をしようということになり取材の方(Yさん)と3名で再びマングローブパークへ。
 レストランから見ると遊技場になっている窪地が完全に池となり、その向こうに同じ高さに住用川が増水しています。この時の水位が最高値かそれよりも少し下がったぐらいだったようです。(14:58)

送信者 20101020住用水害

 レストランには団体の方が30名ほど足止めとなり休憩していました。
 とりあえず昼食としていると、Twitterに投稿したマングローブパーク入り口の写真についてあまみエフエムから問い合わせがあり、ついで鹿児島のM放送局から動画の映像を撮影して送って欲しいという連絡がありました。
 そのやりとりをしているとパチンと停電。(15:00頃)
 食事をそこそこすませて動画撮影へとでかけました。撮影はAndroid携帯ですのでかなり粗いのですが、雰囲気は伝わるでしょうか。
 マングローブパーク駐車場の様子。(15:18)

 マングローブ茶屋からマングローブパークへ下る坂。(15:31)



 マングローブ茶屋から越次橋へ下る様子。(15:48)

 と、ここまでをYouTubeにアップしてM放送局へ連絡をして、もう一本YouTubeにアップしようとしたところで携帯電話が通じなくなってしまいました。

 もう一本というのは、一度マングローブ茶屋へ戻った後、もう一度入り口の様子を見に行って間一髪のところがあったのです。
 マングローブ茶屋へ戻ろうとしたのですが、Kさんと水が引いて流れが少し緩やかになったので濁流を越えて冠水道路に近づいて動画を撮影しようとなったのです。(16:19)

送信者 20101020住用水害

 ところが、撮影していると”ガラガラ”と音が響き山側の電柱と電線が揺れてます。”眼の前の山が崩れる!”と思って逃げ出したのがこの動画です。(16:23)

 動画にも映っていますが、坂の中腹が大きく崩落した衝撃だったのです。(16:30)

送信者 20101020住用水害

 もし、動画を撮影せずにそのまま坂を登っていたら。。。

 Kさんと相談し、マングローブ茶屋から名瀬へはこれで車では行けない。携帯電話も通じない。食事ができるし、住用支所などから情報を得られるはマングローブパークのほうがいいし、暗くなってから藪になっている斜面をマングローブ茶屋からマングローブパークへ移動するには危険すぎる。
 という判断でマングローブ茶屋へ荷物を取って、マングローブパークへ移動する旨伝えに行きました。そのために登った時に見た崩落した場所です。(16:51)

送信者 20101020住用水害

 携帯電話が使えなくなった後はマングローブパークの支配人が水没した道を住用支所へ情報収集に行き来していましたが、ひざ下ぐらいの水になったというので住用支所へ行ってみました。(17:18)

送信者 20101020住用水害

 水没していた手すりが見えるようになっています。

 水位は下がったとはいえ、住用川は恐ろしい流れとなっています。橋の手すりにはたくさんの漂着ゴミがひっかかっていました。(17:21)

送信者 20101020住用水害

 住用川の橋を渡り坂を下ると住用支所までは胸まで水に入らないと渡ることはできません。(17:22)

送信者 20101020住用水害

 同じ場所の横を見ると水が引くときに流された車が引っかかっています。(17:22)

送信者 20101020住用水害

10/20 夜
 夜になり、停電ですし電話は携帯電話も使えませんから、まったく動きようがありません。
 唯一の情報源であり、避難している皆さんがわずかでも情報を得ることで少しでも安心できたのはあまみエフエムでした。
 さらにマングローブパークの職員の皆さんは断水ではありませんが、センサー式のトイレのために水の流れないトイレに、夜通し給湯室の水道からバケツに水をくみトイレに運んでくれ、支配人の指示でお土産店のペットボトルの水を無料配給、レストランは残ったご飯でおにぎりを提供してくれました。

 しかし、おにぎりは足りないということもあり、支配人がひざ下ぐらいの水で住用支所に行けるというので、支所へ行ってみます。。(20:00)
 一階は泥だらけで、皆さん2階で作業しています。
 残り個数も確認せずに、西仲間公民館で炊き出して作ったおにぎりを箱に入れてくれたので、ありがたくいただきマングローブへ帰って皆さんに一人一個ですがお渡しします。
 おにぎりを運ぶ時の緊張感!これで滑ってドロにおにぎりを落としたら。。。

 22:00頃に南部から重機などが運ばれてきたらしく、16:00頃に崩落した場所の邪魔になる木々をチェンソーで切る音が響いていました。

10/21 朝
 神経が立っているせいかちょっと寝ただけで早朝に目が覚めてしまいました。
 明るくなってマングローブ茶屋の方の坂をチェックすると歩道を遮っていた崩落した木々が切断され、歩道を普通車が通れるようになっていました。(6:47)
 すぐにKさんにも伝え、マングローブ茶屋に置いてある車で、まずは住用支所、そして名瀬方面へ車で行けるところまで行ってみます。
 崩落現場は内海公園の木工センターの先。道路を大きく塞いでいます。(6:47)

送信者 20101020住用水害

 右の内海まで流れ込んだ土砂の上を人が歩けるようになっています。
 すぐにUターンして途中の体験交流館の様子を覗き、マングローブパークへ。

 団体のバスや観光タクシーをはじめ観光客の方々、名瀬へ向う予定の方々には 1)市役所からの情報がまず届くのが体験交流館で住用支所やマングローブパークへはなかなか届かない 2)救援物資も体験交流館が先 3)発電施設があるのでトイレなども苦労しない 4)途中の三太郎トンネルの前後などこれから崩落しそうな場所が数カ所ある 5)この後も大雨になりそうな予報が出ている。といった理由を支配人と相談した上でお伝えして、体験交流館へ移動してもらいました。
 木工センター先の崩落現場の情報では、ある程度歩けば名瀬へ行く車までたどり着けそうなので、同行のKさんYさんを車で送り届けました。

10/21 名瀬へ
 その後、一旦マングローブパークへ戻り、手伝えることがないか聞いたのですが、パークはもう避難者は残っておらず、住用支所でも素人はかえって足手まといのようなので、体験交流館へ移動。念のためカギを預けます。
 木工センター先の崩落現場までは歩くと少し距離があるのですが、ちょうど知り合いの地元新聞記者が現場まで送ってくれることになりました。携帯電話が通じないので無事だという伝言を預かります。
 道はぬかるんでいるので注意が必要です。
 慎重に通って振り返った崩落現場。(8:47)

送信者 20101020住用水害

 崩落は海へと続いています。(8:47)

送信者 20101020住用水害

 既にNHKの中継が入ってきていました。

 城集落へ向うと国道はまるで河原です。(8:49)

送信者 20101020住用水害

 城集落手前の金久田橋、名瀬川山手の欄干の下が崩落してます。(8:59)

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 消防団の方々が大型車が通ると橋が崩れるかも、といっていたのはこの橋でしょう。

 城集落の中程まではきれいな道でしたが、それを過ぎると道路上には流されてきた木が。(9:05)

送信者 20101020住用水害

 城集落の名瀬側外れがみえてくるあたりから再び道路が河原となっています。
 そこを奄美市職員の皆さんが黙々と救援物資を運んでいます。(9:06)

送信者 20101020住用水害

 城集落の名瀬側一番外れから集落方向を振り返ると、これはもう国道ではなく河原です。(9:08)

送信者 20101020住用水害

 ここは城集落入り口側から右手が旧国道の和瀬峠、正面を進んで右へ曲がると城トンネルです。右の向こうを向いた標識が城トンネルから出てきた車への標識です。(9:09)

送信者 20101020住用水害

 城トンネル出口から集落方面です。とても国道には見えません。市内へ戻ってきて見たニュースによるとここはトンネルの半分ぐらいが土砂で埋まっていたそうで、重機が忙しく土砂を除去しています。

送信者 20101020住用水害

 この後、城トンネルを抜けると救援物資を運んできた車がたくさん並んでいました。
 さすがにすぐに車に乗せて下さいとはお願いできなかったので、小和瀬トンネルまで歩いたところで名瀬市内へ戻る奄美市役所の車両が声をかけてくれ、電話が使える朝戸のお店まで送ってくれることになりました。

終わりに
 こうやって一晩で帰ってくることができましたが、現地の各集落はまだ停電や連絡がとれないところがほとんどです。
 また、市内に戻ってきてテレビのニュースで笠利・龍郷の状況にも驚きました。
 現地の方々、復旧作業にあたっている方々、救援物資の運搬を行っている市町村職員の皆さんを応援、感謝するとともに、これ以上の被害が出ないことを願いたいと思います。

 今回の経験で痛感したのは情報が無いということがどれだけ不安で大変かということです。
 まさか固定電話が不通になっても携帯電話が使えなくなるとは思いませんでした。
 なかなか情報が得られないために、情報が交錯してしまい、エッ!というような話しも聞きましたが慎重に扱わないといけないですね。
 またTwitterの情報の速さと繋がりの拡がりにも助けられました。さらに有効な利用方法なども考えてみたいとおもいます。

コメント

  1. tougou より:

    兎に角無事で何よりです。

  2. midori より:

    すばやい情報、臨場感せまるお写真さすがですね。
    無事逃げ出せて良かったですね。 大島紬も大変な
    ことになっているとか・・・ 11月に友人が
    田中一村を見にいくと言っていましたが、それどころ
    ではないですね。何かお役にたてれば良いのですが。

  3. tomy より:

    水間さんご苦労さんでした。今広島の呉にいる。奄美庵や和美ねえの店にによく顔出していたTomyです。30キロ近くも歩いたのかな?ご苦労さんでした。あれで島の様子をイメージすることが出来ました。いつも眺めていたコースが改めてよく見ていなかったものだと思います。今後も発信を続けてください。

  4. しろ より:

    ~ 水間さんへ ~

    水間さん♪初めまして。。。しろと申します。
    宜しくお願い致しますm(_ _)m

    今回、奄美の豪雨災害で検索していましたら、
    水間さんの記事に辿り付いた次第です。

    写真と動画を見ながら、こちらまで災害時の恐怖感が伝わってきました。
    水間さんが無事で何よりです♪命がけのレポート大変お疲れ様でしたm(_ _)m

    しろも何か出来ることがあればと考えております。
    自分に出来ることから。。。と思い水間さんのお力をお借りしたく
    コメントを入れさせて頂きました。

    トラックバックさせて頂きますねm(_ _)m
    しろはYahooでブログを開設しています。
    宜しくお願い致しますm(_ _)m 

                      ~しろ~

  5. mizuma より:

    水害に関してまとめWikiを立ち上げてますので、そちらを参考にされてください。
    救援物資は基本的に足りていて、細かいリクエストに応じて用意しているようです。なので、物資を送るよりは義援金に協力いただいたほうがいいと思います。

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