3島(喜界島・沖永良部島・与論島)巡りを終えて

シマ巡り
与論島上空から
与論島上空から

はじめに(島(シマ)巡り)

 20年余り奄美大島をガイドする仕事にたずさわるようになって、”奄美”というキーワードを口にしながら、途中で、”奄美”を奄美群島全体を表しているつもりが、実は”奄美”は奄美大島に住んでいる者だけが無意識に認識していることで、奄美群島内では喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島はそれぞれ、自分の島と、いわゆる”大島”は違う!という意識であることに気付きました。まして、奄美大島も、加計呂麻島・請島・与路島も違うし、大島の中でも各市町村、そしてシマ(集落)毎に、”我がシマ”の意識の違いに気付きました。

 幸い、大島および加計呂麻島はガイドの仕事で日帰りでちょくちょく訪れる場所も多く、請島・与路島も行く機会がありました。
 しかし、その他のの島へは大島を離れて数日間、旅行というのはなかなか難しく、徳之島だけはガイドではなく移住支援の関係で行く機会がありましたが、喜界島・沖永良部島・与論島は行く機会が無かったのですが、今回の新型コロナ騒動でガイドの仕事が実質開店休業状態となったこともあり、思い切って行くことにしたのです。
 当初は、まずは5月末の喜界島、と思ったのですが、これが予想以上に面白く、勉強になったので、6月頭に沖永良部島・与論島と行くこと。
 すべて自腹なので、まぁ、授業料はそれなりかかりましたが、それ以上の収穫があったかと思います。
 旅の様子は上記のリンク先にある旅行記をご覧下さい。
 ここでは、それ以外に島(シマ)巡りで感じたこと、考えたことをまとめます。(長文、注意です。)

島々の違い

島の成り立ち(地質)と動植物の違い

 とりあえず、行ったことないから行かなきゃ、ぐらいの軽い気持ちで行った喜界島でしたが、到着したのが夜9時過ぎでよくわからなかったのですが、翌朝のホテルで目が覚めた時に、いきなりのウグイス、そして朝の散歩で聴いたホトトギスの鳴き声にびっくりです。

 さらには、喜界島の蝶の多さ。オオゴマダラの乱舞にはびっくり
 大島ではオオゴマダラはほとんど見かけることが無く、ビッグ2さんの植物園で飼育しているのと、笠利の佐仁小学校で育てているという話題を聞いたことがあったのですが、見かけることがない理由がようやくわかりました。食草のホウライカガミが大島には無い、地質として石灰岩の地域に自生するものだということを見落としていました。他にも地質が石灰岩質なのか、そうでないかで大島と喜界島の違いを知ることができました。

 同じ石灰岩の島のはずの沖永良部島与論島は、また蝶や鳥の状況が違うのも面白く、謎が残ります。

 また、喜界島の七島鼻百之台与論島の与論城跡の海岸段丘と共通する点が多く、沖永良部島の基底地層侵食された琉球石灰岩には海岸段丘があまり見れず、どちらかというと徳之島の地形・地層に共通点が多いような気がします。

 考えてみるとシンプルなことで、動植物は地面(海底)土壌の上に生息していて、その動植物が関係を作っているわけですから、一番のベースは地面(海底)といった地質になります。上辺(植物の植生や生物の種類)だけを見ても、わからないことが地質を見れば、わかりやすいんだろうなと感じました。
 いかにいままで上辺(うわべ)だけを見ていたのか、痛切に反省した旅でもありました。

集落の違い

 喜界島へ行くにあたって、当初の目的の一つが集落の違いです。
 大島の島内を案内している中で気付いたことが、島の集落はガイドブックで紹介されているようなパターンだけでなく、地域や歴史によって違いがあることです。
 以下では、歴史的な成り立ち等で表記を分け、(大雑把ですが)昔からある「集落」と、戦後に車が普及して道路が新しく敷設されて出来た「町」と区別して表記します。

 大島では「集落」は海岸線沿い、それも、2パターンあり、深めの湾の奥の場合は目の前の海の沖合に豊かなサンゴ礁が自然の堤防としてあり、その奥の砂浜にアダンが生い茂って、その裏に集落があります。サンゴの石垣があってもそれほど大規模なものではありません。(奄美市名瀬の朝仁、瀬戸内町嘉鉄、等)

 一方、外洋に面していて、サンゴも岸近くまでしかない、あるいはサンゴはほとんどなく岩がゴロゴロしているような集落は砂浜も自然の防風林であるアダンなども少なく、集落は大規模なサンゴの石垣に守られてます。(大和村今里、龍郷町円、等)

 ただ、いずれのパターンも墓地は集落に隣接、もしくは集落内の海岸線の砂地に多いです。砂地に埋葬し、改葬の際は海水で遺骨を洗います。

 大島の「町」としては、名瀬や古仁屋、国道・県道沿いの町です。

 喜界島・沖永良部島・与論では共通していたのは、水場(喜界島では「ウリガー」沖永良部島では「暗川(クラゴー)」あるいは「ホー」与論島では「屋川(ヤゴー)」)を中心に「集落」があり、3つの島は農業の島ということもあって、農地改良に伴って移転、あるいは新たに作られた「町」があります。
 ただ、喜界島のほうが「集落」が多く、沖永良部島・与論が「町」が多いような印象です。

 サンゴの石垣については「集落」には残っていましたが、海からの波風から建物を守るというものではないような印象を受けます。「町」にはあまり見当たらず、あっても近代的な建築物としてのものです。

 また、墓地は喜界島だけが風葬地である「ムヤ」をそのまま集落の墓地としていましたが、沖永良部島と与論島では古い風葬地と新しい墓地が別の場所になっているところが多いというのも興味深いです。これも移転等で新しい「町」が多いということも関連するのかもしれません。
 洗骨は喜界島は川の水、沖永良部島は海水だそうです。(与論島は聞きそびれました。)

大和・大島・琉球との関係

 島々の伝承についても差があり、平家伝説(Wikipedeia)は主に奄美大島で喜界島にも上陸の地がありましたが、沖永良部島・与論島では聞きませんでした。ちなみに沖縄でも少ないようです。それに対し、源為朝伝説(Wikipedeia)はほぼ全島にありますし、沖縄は初代琉球王の祖となったとの伝説があります。
 これはのちに薩摩が奄美から琉球に侵攻したことによる影響があるようです。

 与論十五夜踊りの内容についても興味深いものがありました。1番組と2番組がそれぞれ琉球風と大和風であり、衣装も琉球風と大和風が使われる点。
 また、沖永良部島と与論島では琉球のエイサーが盛んらしく奄美大島等の八月踊りのような祭りについては見聞きしなかったです。
 エイサーでは音の高さによって太鼓が異なり鋲止めの太鼓が使われます。
 これに対し、奄美大島・喜界島・沖永良部島では八月踊り等で主に使われるクサビによって音の高さを違えるチヂンです。
 てっきり与論島もチヂンは無いと思っていたら、琉球風の一番組の太鼓が奄美大島のチヂンに比べると倍以上の大きさですが、チヂンと同じクサビを使っている点にこれまで気付きませんでした。
 これも、昔からなのか最近のことなのか等、もう少し、詳しく調べてみたいと思っています。

 喜界島で聞いて面白いと思ったのが、里芋の方言名。元々、奄美大島と喜界島のシマ唄に関して、奄美大島はおおまかに北部のカサン唄と南部のヒギャ唄に分類され、喜界島は北部・笠利の隣にある島にもかかわらず、南部のヒギャ唄が主です。そして、これは後でFacebookの友人から教えてもらいましたが、喜界島の風葬地「ムヤ」は奄美大島・奄美市名瀬の小湊集落(島の東側です)でも「モヤ」でした。

 里芋の芋を奄美大島北部では「マン」南部では「ウム」、喜界島も「ウム」。それが里芋の茎に関しては、奄美大島北部では「クゥワーリ」、喜界島では似た発音で「フワーリ」。ちなみに奄美大島南部では「ムジ」。
 奄美大島の東を流れる海流が島の南部と喜界島を繋いでいるんだなと実感できる話でした。
 沖永良部島では茎は「ムジ」。その他については沖永良部島・与論島では聞きそびれてしまったので、今後の課題です。

旅人としての視点

 ガイドの仕事を始める時には、全然考えたこともなかったのですが、島外からの方をご案内していると、視点・考え方の違い、なにより、お客さんの暮らしている環境との違いをどう見ているかということに気付きました。また、島内であっても、訪れる場所、そこに住んでいる方々の視点や考え方の違いというのが面白くもあり、気付かないことが怖く感じます。

 そういう意味で、今回の旅は、奄美大島の自然・文化・歴史等が他の島とどう違うのかという勉強でもありましたが、「旅人」して、どう見て、どう感じるのかということも考えさせられました。

船旅の勧め

 今回、奄美大島への帰りは飛行機を使いましたが、喜界島への往路はフェリー、沖永良部島へと沖永良部島から与論島までもフェリーを利用しました。
 理由の一つは完全自腹なので少しでも安くするためでしたが、もう一つが海から見る島々の海岸線・構造、そして島と島の距離感です。
 喜界島は天候が良くなかったこともあり、早めに暗くなってしまいましたが、集落の明かりとGoogleMapでの位置情報を使って確認ができます。
 沖永良部島・与論島までの航路では、その間の島々の様子がよくわかります。

 奄美大島だけでも、陸地からだけだと山に隔てられて集落間の移動は大変で、昔の人はどうしてこんな場所に住みついたんだろうと不思議に思うかもしれませんが、海から見ると集落が海で繋がっているということが実感できます。

 また、天候や時間帯によっては夕日や朝日をみながら、なかなか優雅なクルージングができます。一度はお勧めします。
 お勧めは、喜界島航路を利用して奄美市名瀬から瀬戸内町古仁屋までのショートクルージング。古仁屋・名瀬間はバスで移動すれば、ちょっとした船旅を楽しめますし、運転の必要がありまんから、フェリーの甲板でビール片手に・・・どうですか?。

 ちなみにほぼ全域で携帯は繋がります。また、今回は利用しませんでしたが、フェリーには無料Wi-Fiの設置されているようです。

島内の移動手段とサポートツール

 お天気がよければ、喜界島・沖永良部島・与論島はレンタルバイク(50cc)で十分と思います。確かに奄美大島に比べれば山は少ないのですが、それでもちょっとした坂が多く、自転車ではちょっとハードでしょう。また、道が細いので、レンタカーは軽でもちょっと難しい場所が多いと思います。

 バイクにカーナビはついていませんが、スマホのGoogleMapが便利です。あらかじめ、Googleマップのマイマップで行きたい場所などを設定しておけば、あとは現地で確認が簡単ですし、旅の後で、写真を入れ込んで記録することもできます。
 3島ともにかなりの部分を地元の方にご案内いただきましたが、その時でもGoogleMapのGPSでの位置情報を確認することで、より詳しく知ることができたかなと思います。ご案内の方に余計な質問をして煩わせることもなかったんじゃないかな。

 また、旅行中の連絡先や事前に調べたメモはGoogleKeepに記録しておくと、スマホで表示させると電話番号があればタップするだけで電話をかけてくれますし、サイトを開くことも簡単・便利です。

その他

 今回、ネットを通じて、各島々の情報を探しましたが、やはり最終的には人です。
 特にFacebookに”今度、行きます!”と書き込んだところ、”この島では、あの人に会うといいよ。”という情報をたくさんいただきましたし、しばらくお会いしていなかった方もFacebookでは様子を拝見していたので、連絡をしてみると快諾して情報をいただいたり、現地でお会いしたり、ご案内いただいたり。
 こういった方々がいらっしゃらなかったら、全然時間が足りないどころか、気付かないことばかりだったと思います。
 もちろん、こちら側もちゃんと考えてから質問やお願いしなければ、それなりの反応しかないのでしょうが、今回は本当に恵まれていました。情報を頂いた方、お会いした方、ご案内していただいた方、皆さんに感謝しています。
 同じく、奄美大島を訊ねる方にも、そういうサービスができるように心がけねば。

 今回の旅では残念なことも数点ありました。
 書いていいことかどうか判断に迷いましたが、少し参考になれば。

 まずは、コロナ対策、仕方がないとはいえ、各施設が閉鎖されていて見学は一部を除き、ほとんど出来ませんでした。また、島外者お断りというお店は島々によって、また島の中でも店舗によって対応が異なりましたが、あるお店では、さすがに他に食事が出来る場所も無いし、少しは話を聞いてくれるかなと、”(奄美)大島からですが・・・”と聞いても、”お断りします!”の一言で、質問も何もなかったのは、ちょっとがっかりでした。他にお店はないわけですから、”宿泊は?申し訳ないけど、うちはだめですけど、〇〇というお店がここから何分のところ、それか近くにスーパーもありますよ”とか・・・・わがままでしょうか。
 幸い近くのスーパーと、宿泊先の方の対応に助けられましたが。

 別の日にお昼に入ったお店では、色んな話をしてくれて、すごく楽しかったです。
 そのお店だけじゃなくて、その地域に対する印象はかなり違ってしまいます。

 ガイドブック等にも掲載されている史跡を訪れた時には、史跡の案内板が新しくなっていて、そこには近くに最近発見された史跡があります書かれていたので、案内していただいた方が駐車場も無いからと配慮して少し歩いていくと、そこへ通じる道の草刈をしている人に呼び止められ、何処からかと聞かれたので、”(奄美)大島、名瀬からです。”と答えたのですが、難しい顔をしたまま、”ここは観光客の来る場所じゃぁないんだよね・・”。
 案内してくれた方によると、その史跡は個人所有の敷地とのことで、恐らく、そこを管理している方が清掃作業していたのでしょう。
 史跡の案内板は町が設置していましたが、設置にあたり、もう少し、地元の方との調整をしておいていただかないと、かなりマイナスのイメージを受けました。ちなみに、その場でUターンして、その史跡へは行っていません。

終わりに

 まとめているうちに、やはり徳之島も自分の足で廻り、目で見て、感じないといけないですね。次は徳之島へ旅の計画中です。
 恐らく、また色んな島々に対しても、また疑問が出てきて、自分の目で見て、直接お会いして、お話を聞いてみたくなると思います。
 同じパターンで年に1度は行ってもいいのかなと、考えているところです。

 長文、失礼しました。最後までお読みいただきありがとうございます。

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